政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい
「間取りのご希望やこだわりなどに合わせて提案させていただければと思いますので、よろしければこちらのアンケート用紙にご記入をお願いできますか?」
女性はすぐにうなずき、記入を始める。
そして、数分で書き終えた用紙が差し出されたので、「ありがとうございます」と言い受け取ったときだった。
左手の人差し指の先にピリッと痛みが走った。
視線を移すと、アンケート用紙の一部がじわじわと赤く染まりだしていて驚く。
その赤の出所は私の指先だった。紙で切れたのか、血が出ている。
「あ、すみません。私が変な渡し方をしたから……」
女性が近づくので、急いで一歩下がった。それから笑顔を向ける。
「いえ。全然大丈夫です。私の受け取り方が悪かったんだと思います。お客様は大丈夫ですか?」
深く切れたのか、傷痕から血が滲むだけに留まらず滴となって今にも流れ落ちそうだった。
左手を顔の横まで上げて聞く。
女性はわずかに目を見開いたあと「あ……私は大丈夫です、けど」と答えたのでホッとする。
「それならよかったです。私、雑でこういうケガもしょっちゅうなのでどうぞお気になさらないでくださいね。あ、すみません、足元気を付けてください。せっかく素敵なヒールなのに汚れてしまったら大変ですから」
咄嗟に持ち上げはしたけれど、玄関のタイルの上にはすでに血が落ちている。
女性は白いヒールを履いているし、汚してしまったら困る。
タイルでよかった。玄関マットだったら汚れを落とすのが大変なところだった。
そう胸を撫でおろしていたとき、資料をひとつのビニール袋にまとめた白崎が戻ってくる。