愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
彼はその小皿を受け取ると、まず箸でじゃがいもを。それから小鉢に口をつけてスープを飲む。

「………どう、でしょうか?」

「うまい。和風なんだな……出汁がよく染みていて、なんだかほっとする」

「良かった…!」

欲しかった言葉が貰えて、こちらもほっとする。

「だけど完全に和食の煮物ともちょっと違うような……和と洋が合わさったような感じで。生姜が入っているのは分かったのだが……」

「すごいですね、祥さん。生姜と一緒に隠し味に入れたのはこれです」

わたしは鍋の中から菜箸であるものを摘まみ上げた。

「お茶パック?」

「外側はそうなんですが、中身はこれです」

わたしはお茶パックの入り口を開いて、中にあるものを見せた。

「……ハーブか?」

「正解です!これは自家製ブーケガルニで、中身はタイムとパセリとローリエなんです。本来は名称の通りにタコひもで縛って『ブーケ』にするものなのですが、ガーゼに包んだりスーパーで売っているお茶パックでも十分代用できるんですよ」

「なるほど」

ローリエは乾燥のものがキッチンにあったのでそれを使って、タイムとパセリは植えたばかりの苗から少しだけ拝借した。
本当はもう少し伸びた枝の切り戻しを兼ねて収穫するのだけれど、今回は先の方を少しだけ摘ませてもらった。和風ポトフの隠し味ならそれで十分。
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