愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
わたしはキュッと下唇を噛みしめて必死に頷いた。間近にある整った顔に、心臓がうるさく暴れ出すのをいったいどうなだめればいいのか全然分からない。

視線をさ迷わせながら、内心で悶えていると。

「仔ダヌキに元気がないと、気になっておちおち家を空けられないからな」

「こだっ!……もうっ!仔ダヌキ仔ダヌキって、ひどいですよ祥さん!どうせ童顔タヌキ顔だもんっ…!」

「そう怒るな。仔ダヌキは可愛いじゃないか」

「全然褒められている気がしないんですが……」

思いきり頬を膨らませて睨むと、彼は「あはは」と楽しそうに声を上げて笑い始める。その笑顔に、わたしの胸が一段と大きな音を立てた。

一見近寄りがたい雰囲気を持っている彼が見せた打ち解けた笑顔に、我知らず胸が甘く疼いてしまう。

(好きだなぁ……)

自然と心の中で呟いた言葉が、胸の奥のどこかにストンとはまった。

(わたし……もしかして祥さんのこと、好きになったの…?)

思わず「うそ……」と声に出して言うと、横から伸びてきた腕にいきなり腰をさらわれた。
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