愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
「これなら俺でも作れそうだ。飲みたくなったら遠慮なく言っていいぞ?」

「え、……祥さんが作ってくださるのですか?」

「ああ、そうだ。こんなことくらいしか俺が寿々那にしてやれることはないからな」

「そんなこと、」

『ありません』とわたしが言い切る前に、彼の方が先に言葉を続けた。

「食事もろくに食べられなくて、起きている時はずっと気持ちが悪いんだろう?」

「それは……そうですが、」

それが『つわり』というものなのだから仕方ない。

「二人のこどもなのに、寿々那ばかりつらい思いをさせてしまって……少しくらい代わってやれたらいいのにな」

「祥さん……」

こんなに至れり尽くせりの手厚い待遇をしてくれているのに、まさかそんなことまで言い出すなんて。胸がじわりと温かくなる。

わたしは手に持っていたグラスをローテーブルの上に置いて、彼に向き直った。

「祥さん」

「なんだ。どうした、急に改まって」

「わたし、祥さんの赤ちゃんを身ごもれて幸せです」

「………」

「今は正直つわりで辛いですが、でも、それだってここで赤ちゃんが無事に育ってくれている証拠なんです。祥さんとわたしの赤ちゃんが元気なんだって思ったら、辛いけど嬉しいんです」

彼の目を見て、「絶対にこの子を守りますね」とにっこりと微笑んでみせる。

切れ長の瞳が軽く見張られた。
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