愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
しばらくして自由になった口で「ほうっ」と息をついた。
広い胸にくたりと寄りかかると、「大丈夫か?」という声が降ってくる。激しいキスではなかったから息が上がっているわけではないけれど、上手く声が出せそうになかったので頭だけ縦に動かした。
「そうか。……でも辛くなったり具合が悪くなったりしたら、叩いてでもいいからきちんと伝えてくれ」
「叩いてって……」
「口を塞いでいたら喋れないだろう?無理はさせたくないからな」
「………」
『無理はさせたくない』と言いながらも、わたしにキスをするのはどうしてなんだろう。
キスが好きなのかな……。
それとも何か別の理由が―――。
ふとわたしの頭にあることがよぎった。
妊娠が分かってから、彼に一度も抱かれていないのだ。
最初の頃はつわりに耐えることで精いっぱいで、そんなことを気にする余裕はなかった。
けれど今、頭の片隅でそのことが気になるようになっていた。
それまでは、一緒に居る時は昼夜問わず求められていたのに、と。
男性の生態には詳しくないけれど、『シないのはつらい』と聞いたことがある。
祥さんは欲求不満じゃないのだろうか……。