愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
ぼうっと見惚れているわたしに、彼は思わぬことを言った。

「じゃあこれからも安心して遠慮なく寿々那を抱けるな」

「だっ…!て、それとこれとはっ、」

「好きなんだろう?」

「ちがっ、」

「落ち着くってことは好きってことだよな」

「~~っ、それは匂いのことでっ…!」

慌てるわたしに祥さんがくつくつと肩を揺らして笑う。

「分かってる。ちなみに、さっきの『抱く』は『抱きしめる』ってことで、寿々那が期待した『セック、」

「わわわっ分りましたっ…!全部言わなくてもっ!」

大慌てで彼の言葉を遮ると、今度こそ彼は大きな声で「あはははっ」と笑った。
どうやらまた揶揄われたらしい。

何度も同じ手に引っかかってしまう自分が悔しくて、「もうっ」と頬を膨らませてからそっぽを向くと、「膨れた仔ダヌキも可愛いな」なんて言う。

言い返す気力が起こらず、ガックリと(こうべ)を垂れると、打って変わって真剣な声が降ってきた。

「この子を絶対に守ると言ってくれた寿々那を、俺は絶対に守る」

胸の高鳴りに突き動かされて顔を上げると、温かなくちづけが降ってきた。

またしても、この強引な旦那様の甘い甘いくちづけに、わたしはゆるゆると(とろ)かされていったのだった。


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