愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
《寿々那。今電話いいかしら?》
「うん、大丈夫よ」
《調子はどう?ちゃんと食べられてる?つわりはまだ続いているのよね?》
「うん。まだあまり食欲はないの。でもそれなりに食べられるものを食べてるから心配しないで」
わたしがそう言うと、母は「そう……」と相槌をくれたあと沈黙した。
わたしは不思議に思った。
夕方のこの時間、女将の母は一番忙しいはず。特に金曜の夜は、ご予約のお客さまで埋まっていることが多いのだ。それでなくても、電話での連絡はあまりしない。急な用事以外はメッセージで送っておくことの方が多いのだ。
よっぽど何か、急ぎの用件でかけてきたと思ったのに―――。
「お母さん…?」
《寿々那……あなた、香月さんから何か伺っている?》
「え、何かって……」
一瞬この『政略結婚』のことかと思ってドキッとしたけれど、母が口にしたのはそれとは別の、まったく思いもよらないことだった。
《荒尾さんのこと……》
「えっ!」
わたし上げた驚きの声を母は肯定と勘違いしたらしく、《やっぱり聞いていたのね……》とため息まじりに呟いた。
実際は祥さんとの間で荒尾の話をしたことはない。
二週間前に偶然荒尾と出会ったことも話さなかったので、わたしたちの間で荒尾の話が話題に上ることすらなかった。
何のことか分からなくて戸惑うわたしに、母は更なる衝撃をもたらした。
《荒尾さんの横領のこと》
「えっ!!」
「うん、大丈夫よ」
《調子はどう?ちゃんと食べられてる?つわりはまだ続いているのよね?》
「うん。まだあまり食欲はないの。でもそれなりに食べられるものを食べてるから心配しないで」
わたしがそう言うと、母は「そう……」と相槌をくれたあと沈黙した。
わたしは不思議に思った。
夕方のこの時間、女将の母は一番忙しいはず。特に金曜の夜は、ご予約のお客さまで埋まっていることが多いのだ。それでなくても、電話での連絡はあまりしない。急な用事以外はメッセージで送っておくことの方が多いのだ。
よっぽど何か、急ぎの用件でかけてきたと思ったのに―――。
「お母さん…?」
《寿々那……あなた、香月さんから何か伺っている?》
「え、何かって……」
一瞬この『政略結婚』のことかと思ってドキッとしたけれど、母が口にしたのはそれとは別の、まったく思いもよらないことだった。
《荒尾さんのこと……》
「えっ!」
わたし上げた驚きの声を母は肯定と勘違いしたらしく、《やっぱり聞いていたのね……》とため息まじりに呟いた。
実際は祥さんとの間で荒尾の話をしたことはない。
二週間前に偶然荒尾と出会ったことも話さなかったので、わたしたちの間で荒尾の話が話題に上ることすらなかった。
何のことか分からなくて戸惑うわたしに、母は更なる衝撃をもたらした。
《荒尾さんの横領のこと》
「えっ!!」