愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
さっきよりさらに大きな声で驚いたわたしに、電話の向こう側から《寿々那?》と戸惑う声がしたけれど、あまりに衝撃すぎて返事も出来ない。自然と口から「なんでそんなこと……」とこぼれていた。
《香月社長が……祥さんが色々と調べてくれて分かったのよ》
「祥さんが…?」
《ええ。グループから経営コンサルタントを派遣してくださって。それで外部の目が入ってやっと、経費に不審な点があるって分かって……。事務経理は荒尾さんに任せっぱなしにして、彼の話を鵜呑みにしてしまったわたし達の落ち度だわ……経営者失格ね………》
母はそう言って、重い溜め息をついた。
「そんな……」
かける言葉が見当たらない。十年もの間、父の右手として森乃やを支えてきた荒尾が、まさか横領を働くなんて。
荒尾は、わたしにとっては生理的に受け付けられない苦手な相手だったけれど、社長と女将にとっては真面目で勤勉な社員。二人が彼のことを頼りにするのは当たり前のことのように思う。
だからこそ、最初はわたしと荒尾を結婚させて跡継ぎにしようと思ったのだろうに―――。
「いったいいつから……」
《分からないの……少なくともここ二、三年は確実かもしれないわ……これからそれを詳しく調べようとしていたのだけど……》
「だけど?」
《荒尾さんが消えたのよ。帳簿と経理データを持ち出して》
「ええっ…!」
《彼に気付かれないように調べていたつもりだったのだけど、香月グループの調査員が入るという話がどこかから漏れたのか、勘付かれたのか……》
《香月社長が……祥さんが色々と調べてくれて分かったのよ》
「祥さんが…?」
《ええ。グループから経営コンサルタントを派遣してくださって。それで外部の目が入ってやっと、経費に不審な点があるって分かって……。事務経理は荒尾さんに任せっぱなしにして、彼の話を鵜呑みにしてしまったわたし達の落ち度だわ……経営者失格ね………》
母はそう言って、重い溜め息をついた。
「そんな……」
かける言葉が見当たらない。十年もの間、父の右手として森乃やを支えてきた荒尾が、まさか横領を働くなんて。
荒尾は、わたしにとっては生理的に受け付けられない苦手な相手だったけれど、社長と女将にとっては真面目で勤勉な社員。二人が彼のことを頼りにするのは当たり前のことのように思う。
だからこそ、最初はわたしと荒尾を結婚させて跡継ぎにしようと思ったのだろうに―――。
「いったいいつから……」
《分からないの……少なくともここ二、三年は確実かもしれないわ……これからそれを詳しく調べようとしていたのだけど……》
「だけど?」
《荒尾さんが消えたのよ。帳簿と経理データを持ち出して》
「ええっ…!」
《彼に気付かれないように調べていたつもりだったのだけど、香月グループの調査員が入るという話がどこかから漏れたのか、勘付かれたのか……》