愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
それから母の話を詳しく聞くと、荒尾が出勤しない日を狙って事務所の帳簿や出納データを調べることになっていたという。確固たる証拠を掴んでから、荒尾に不正の事実を確認することになっていたらしい。

母は時折言葉を詰まらせながら語り、最後に《こんなことになるなんて……あのまま結婚しなくて本当に良かったわ》と呟いた。

その言葉に、胸の中で複雑な気持ちが一気に巻き起こった。

荒尾には謝っても許してもらえないほど悪いことをしたと、心の隅にこびりつくように罪悪感が残っていたけれど、結果として横領を働いている相手と結婚しなくて良かったのだとホッとする。
と同時に、母とっての一番は森乃やなのだとがっかりした。わたしの結婚相手は森乃やにとって有益かどうか。わたしの幸せなんて二の次三の次なのだ。

《もし万が一、荒尾さんがそちらに行ったとしても、絶対にあなた一人で会ってはダメ。あなたは今大事な時なのだから》

「うん……」

相槌を打つには打ったものの、胸の中は、喜びと悲しみと怒りが混濁している。

《そのことだけ気を付けてと言おうと思って電話したの……。こちらのことは気にしないでいいから、今はお腹の赤ちゃんを無事に産むことだけ考えたらいいわ》

「分かってる……」

彼の子を身ごもっているから、祥さんはわたしを大事にしてくれるのだ。余計なこと(・・・・・)なんて考えない方がいいことくらい、わたしが一番よく分かっている。
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