愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
母はひと通りのことを話して胸の内が軽くなったのか、声のトーンをひとつ高くして言った。
《それはそうと。あなたも他に好きな人がいるのならいると、最初に教えてくれたら良かったのよ。そうしたら荒尾さんと結婚させようなんて、わたしたちも考えなかったのに》
「なっ…!そんな……」
母のセリフにカチンときた。
本当は祥さんとお付き合いをしていた事実なんてどこにもなくて、ただの勢いだけであの場から逃げ出したくせに、そのことを忘れるほど頭に血が上った。
「相手が祥さんじゃ……香月グループの社長じゃなくても、お母さんは今と同じことを言ったの!?」
《え、》
「言わなかったわよね……わたしがもし付き合っている人がいるから森乃やには戻らないって言ったら、お母さんはきっと『森乃やを見捨てるのか』って言ったはずよ」
《そんなこと……》
「『ない』なんて言わせないっ…!だって……だって森乃やの為にロンドンでの仕事を辞めて帰ってこいって言ったのはお母さんじゃないのっ…!」
《寿々、》
「お父さんもお母さんもいつも森乃やが一番…!わたしのことなんて…別にどうでもいいくせにっ…!!」
黙ってしまった母に一瞬言いすぎたという考えが過ったけれど、感情が昂りすぎて勢いを止めることが出来なかった。
叫んでからすぐ通話を切った。勢いのままソファーの角めがけてスマホを投げつける。程よくコシのある座面でバウンドしたスマホは、上質な皮の上を滑るように回転しながら落ちた。
床に転がるスマホをしばらく呆然と眺めていた。肩で息をしていたのが整ってから、それを拾い上げようと手を伸ばした時。
―――ピンポーン
リビングに呼び鈴が鳴り響いた。来客を確認しようとモニターを覗いたわたしは、思わず目を見張った。
《それはそうと。あなたも他に好きな人がいるのならいると、最初に教えてくれたら良かったのよ。そうしたら荒尾さんと結婚させようなんて、わたしたちも考えなかったのに》
「なっ…!そんな……」
母のセリフにカチンときた。
本当は祥さんとお付き合いをしていた事実なんてどこにもなくて、ただの勢いだけであの場から逃げ出したくせに、そのことを忘れるほど頭に血が上った。
「相手が祥さんじゃ……香月グループの社長じゃなくても、お母さんは今と同じことを言ったの!?」
《え、》
「言わなかったわよね……わたしがもし付き合っている人がいるから森乃やには戻らないって言ったら、お母さんはきっと『森乃やを見捨てるのか』って言ったはずよ」
《そんなこと……》
「『ない』なんて言わせないっ…!だって……だって森乃やの為にロンドンでの仕事を辞めて帰ってこいって言ったのはお母さんじゃないのっ…!」
《寿々、》
「お父さんもお母さんもいつも森乃やが一番…!わたしのことなんて…別にどうでもいいくせにっ…!!」
黙ってしまった母に一瞬言いすぎたという考えが過ったけれど、感情が昂りすぎて勢いを止めることが出来なかった。
叫んでからすぐ通話を切った。勢いのままソファーの角めがけてスマホを投げつける。程よくコシのある座面でバウンドしたスマホは、上質な皮の上を滑るように回転しながら落ちた。
床に転がるスマホをしばらく呆然と眺めていた。肩で息をしていたのが整ってから、それを拾い上げようと手を伸ばした時。
―――ピンポーン
リビングに呼び鈴が鳴り響いた。来客を確認しようとモニターを覗いたわたしは、思わず目を見張った。