愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
手すりを掴んで何とか階段をのぼりきったとき、廊下の右手側にある寝室とは逆側、書斎の扉が少し開いていることに気が付いた。忘れ物を取りに入った井上さんが、慌てていて閉め忘れたのだろう。わたしはそれを閉めようと書斎の方へ足を向ける。
閉めるために手を伸ばしたドアノブを押すではなく引いてしまったのは、井上さんが他に忘れ物をしていないか気になったから。
わたしは普段この部屋にはほぼ足を踏み入れない。
別に祥さんから「入ってはいけない」と禁止されているわけではなく、彼が仕事で使う大事な物が置いてあることは分かっていたので、万が一自分が触って壊したり失くしたりしたら嫌だな、と無駄に出入りしないようにしていたのだ。わたしには用事のない場所でもあるし。
これまでじっくりと書斎の中を見たことがなかったわたしは、つい部屋の中を見渡してしまった。
窓際ある大きなデスクには、パソコンのモニター以外には何も置かれておらず、背の高い革張りの椅子が綺麗に収まっている。
天井まである本棚には、わたしが読んでも分からないような難しそうなタイトルの本がたくさん並んでいた。
やっぱりわたしには何の用もない場所。
そう思って踵を返した時、本棚の端にあるファイルがふと目に留まった。
背表紙に『森乃や調査書』と書かれてある。
閉めるために手を伸ばしたドアノブを押すではなく引いてしまったのは、井上さんが他に忘れ物をしていないか気になったから。
わたしは普段この部屋にはほぼ足を踏み入れない。
別に祥さんから「入ってはいけない」と禁止されているわけではなく、彼が仕事で使う大事な物が置いてあることは分かっていたので、万が一自分が触って壊したり失くしたりしたら嫌だな、と無駄に出入りしないようにしていたのだ。わたしには用事のない場所でもあるし。
これまでじっくりと書斎の中を見たことがなかったわたしは、つい部屋の中を見渡してしまった。
窓際ある大きなデスクには、パソコンのモニター以外には何も置かれておらず、背の高い革張りの椅子が綺麗に収まっている。
天井まである本棚には、わたしが読んでも分からないような難しそうなタイトルの本がたくさん並んでいた。
やっぱりわたしには何の用もない場所。
そう思って踵を返した時、本棚の端にあるファイルがふと目に留まった。
背表紙に『森乃や調査書』と書かれてある。