愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
わなわなと震える唇をきつく噛みしめている間にも、荒尾はどんどんと好き勝手に話していく。
「今からでも遅くない。こんな女はさっさと森乃やに返してしまった方がいい」
「―――返したからといってどうなるんだ。おまえが使い込んだ一千万とは問題が別だろう」
「それはこれから一生懸命働いてお返しすると、森乃やの社長に頭を下げます」
「頭を下げて許されるとでも?」
「許すしかないでしょう、この女の腹の中には俺の子がいるんですからね」
耳を疑った。いったいどこをどうしたら、そんな妄想じみた嘘がつけるのか。
驚愕のあまり、目の前がくらりと揺れる。
(なんでそんなっ……ありもしないことをっ…!)
わたしが心の中で叫ぶのと、祥さんが「は?」と怪訝な声を上げるのは同時で。
顔を上げて『そんなのは真っ赤な嘘です』と叫びたいのに、頭と背中が荒尾の胸に押さえつけられていて出来ず、両手で必死に目の前の体を押し返そうとしてもビクともしない。
「あれ…?香月社長もまんまと騙されましたか?どうせこの女は香月社長との子どもってことにすれば、あんたと結婚出来ると思ったんでしょうね」
「―――何を根拠にそんなことを言う」
「証拠ならちゃんとここに」
荒尾の腕が少しずれ、ごそごそとズボンのポケットを漁る気配がしたあと、クシャリと紙が擦れる音と共に背中の腕がゆるんだ。
とっさに、荒尾から離れようと体をよじったけれど、肩をがっしりと掴まれてすぐに引き戻される。
「祥さ、」
「見てください、これです」
「今からでも遅くない。こんな女はさっさと森乃やに返してしまった方がいい」
「―――返したからといってどうなるんだ。おまえが使い込んだ一千万とは問題が別だろう」
「それはこれから一生懸命働いてお返しすると、森乃やの社長に頭を下げます」
「頭を下げて許されるとでも?」
「許すしかないでしょう、この女の腹の中には俺の子がいるんですからね」
耳を疑った。いったいどこをどうしたら、そんな妄想じみた嘘がつけるのか。
驚愕のあまり、目の前がくらりと揺れる。
(なんでそんなっ……ありもしないことをっ…!)
わたしが心の中で叫ぶのと、祥さんが「は?」と怪訝な声を上げるのは同時で。
顔を上げて『そんなのは真っ赤な嘘です』と叫びたいのに、頭と背中が荒尾の胸に押さえつけられていて出来ず、両手で必死に目の前の体を押し返そうとしてもビクともしない。
「あれ…?香月社長もまんまと騙されましたか?どうせこの女は香月社長との子どもってことにすれば、あんたと結婚出来ると思ったんでしょうね」
「―――何を根拠にそんなことを言う」
「証拠ならちゃんとここに」
荒尾の腕が少しずれ、ごそごそとズボンのポケットを漁る気配がしたあと、クシャリと紙が擦れる音と共に背中の腕がゆるんだ。
とっさに、荒尾から離れようと体をよじったけれど、肩をがっしりと掴まれてすぐに引き戻される。
「祥さ、」
「見てください、これです」