愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
祥さんに背中を向けているわたしには、荒尾が彼に向かって何をつき出したのか分からなかった。
―――けれど。
「腹の子のエコー写真です。俺はこれを二週間前にこの女から貰った」
わたしは息を呑んだ。あの時、わたしが落としたエコー写真を荒尾は拾っていたのだ。
背後から「二週間前……」と呟く祥さんの声がする。
「そうです。二週間前も俺たちはひそかに会っていた。その時に教えられたんですよ、お腹の子が俺の子だってこと。そもそも結婚することになっていた俺たちの間に、本当に何もなかったとお思いですか、香月社長。婚礼の時にあんたが森乃やからこの女を連れ去った時には、もう俺たちの子がいたってことですよ」
「ちがっ」
「この女の言うことは信じたらダメですよ。あの計算高い女将の娘なんですから」
わたしの否定を自分の声でかき消した荒尾は、なぜか母のことを持ちだしてきた。どうしてここで母のことを―――。
「森乃やの女将は娘をあんたに差し出して融資を受けて、さらに娘とあんたとの間に子どもがいれば香月グループが永久にバックにつくことになる。そうなれば森乃やは安泰。腹の子が女の子なら、いずれ女将候補として養子に、という話だっだでしょう?……さすが森乃やの女将。上手いこと考えたと思いますよ」
「そ、そんなこと……お母さんはひと言も……」
「娘に言うより香月社長に直接言った方が早いと思ったんだろうよ。そうですよね、香月社長」
―――けれど。
「腹の子のエコー写真です。俺はこれを二週間前にこの女から貰った」
わたしは息を呑んだ。あの時、わたしが落としたエコー写真を荒尾は拾っていたのだ。
背後から「二週間前……」と呟く祥さんの声がする。
「そうです。二週間前も俺たちはひそかに会っていた。その時に教えられたんですよ、お腹の子が俺の子だってこと。そもそも結婚することになっていた俺たちの間に、本当に何もなかったとお思いですか、香月社長。婚礼の時にあんたが森乃やからこの女を連れ去った時には、もう俺たちの子がいたってことですよ」
「ちがっ」
「この女の言うことは信じたらダメですよ。あの計算高い女将の娘なんですから」
わたしの否定を自分の声でかき消した荒尾は、なぜか母のことを持ちだしてきた。どうしてここで母のことを―――。
「森乃やの女将は娘をあんたに差し出して融資を受けて、さらに娘とあんたとの間に子どもがいれば香月グループが永久にバックにつくことになる。そうなれば森乃やは安泰。腹の子が女の子なら、いずれ女将候補として養子に、という話だっだでしょう?……さすが森乃やの女将。上手いこと考えたと思いますよ」
「そ、そんなこと……お母さんはひと言も……」
「娘に言うより香月社長に直接言った方が早いと思ったんだろうよ。そうですよね、香月社長」