愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
「いってぇ…!」

予測不可能なわたしの行動に荒尾が息を呑んで一瞬固まった。
けれどすぐに、わたしを引きはがそうと顔を左右に振る荒尾に必死に食らいつく。

そして次の瞬間、荒尾の髪をギュッと掴んで、思いっきり歯を立てた。

「ぐわっ…!」

叫び声と同時に、荒尾がわたしを突き飛ばした。
後ろ向きにたたらを踏んで、体が背中から傾いていく。

ストップモーションのように視界が変わっていき、(あ、このまま倒れる)―――そう思った時。

「寿々那っ!」

大きな声と同時に、背中から温かいものに包まれた。

「なんて無茶を……大丈夫か」

「はい……」

彼の温もりに安堵してわたしが小さく頷くと、祥さんがホッと息を吐き出した。けれどすぐに険しいを荒尾に向ける。

「荒尾」

眼だけで射殺せそうなほど鋭く睨まれた荒尾がたじろいだ。祥さんはその隙を見逃さずすばやく荒尾に接近し、わたしが「あっ」と口にした数秒後には、荒尾の腕を捻り上げながら床に組み伏せてしまった。
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