愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
愛はここに
[1]
優しく頭を撫でられる感触に、ゆっくりと意識が浮上した。
重たいまぶたを少しずつ押し上げると、「寿々那っ」と呼ぶ声。首を少し右に回すと、ベッドのすぐ横に祥さんが立っていた。
上衣を着ず、白いドレスシャツの袖をひじまでまくり上げている彼に、もしかしたら少し前に帰ってきていたのかもと思う。
(わたし、寝過ごしちゃったのかも……)
そう思いながら開いた口が、乾いていて動かしづらい。
「おかえり、なさい……」
途端、彼の瞳がみるみる見張られた。
切れ長の瞳は大きく見開かれ、男らしい眉が高く持ち上がっている。
そんな顔、珍しいな―――。
ぼんやりと思うと同時に、彼の額にかかる前髪が目に留まった。
いつも仕事へは整髪剤できっちりと後ろに整えて行くのに、いったいどうしたんだろう。
不思議に思いながら、落ちている前髪を整えてあげようと手を伸ばす。
―――が、その手は大きなふたつの手によって、しっかりと包み込まれた。
「しょ、」
「目覚めてくれて良かった……」
「え、」
「このまま目覚めなかったらどうしようかと思った」
彼はそう言ったあと、わたしの手を包んでいる自分のこぶしに、額をコツンと当てた。
ベッドに横になったままのわたしは、それをぼんやりと眺める。
祥さんは同じ姿勢のまま黙っているけれど、代わりに握られている右手から彼の温もりが伝わってくる。
いつもと違う、どこか心許ない彼の気配。
わたしはふと、目の前の頭を撫でたくなった。そうしようと反対側の手を持ち上げる。
「……あっ、」
左腕に着けられた細い管に、思わず声が漏れた。
優しく頭を撫でられる感触に、ゆっくりと意識が浮上した。
重たいまぶたを少しずつ押し上げると、「寿々那っ」と呼ぶ声。首を少し右に回すと、ベッドのすぐ横に祥さんが立っていた。
上衣を着ず、白いドレスシャツの袖をひじまでまくり上げている彼に、もしかしたら少し前に帰ってきていたのかもと思う。
(わたし、寝過ごしちゃったのかも……)
そう思いながら開いた口が、乾いていて動かしづらい。
「おかえり、なさい……」
途端、彼の瞳がみるみる見張られた。
切れ長の瞳は大きく見開かれ、男らしい眉が高く持ち上がっている。
そんな顔、珍しいな―――。
ぼんやりと思うと同時に、彼の額にかかる前髪が目に留まった。
いつも仕事へは整髪剤できっちりと後ろに整えて行くのに、いったいどうしたんだろう。
不思議に思いながら、落ちている前髪を整えてあげようと手を伸ばす。
―――が、その手は大きなふたつの手によって、しっかりと包み込まれた。
「しょ、」
「目覚めてくれて良かった……」
「え、」
「このまま目覚めなかったらどうしようかと思った」
彼はそう言ったあと、わたしの手を包んでいる自分のこぶしに、額をコツンと当てた。
ベッドに横になったままのわたしは、それをぼんやりと眺める。
祥さんは同じ姿勢のまま黙っているけれど、代わりに握られている右手から彼の温もりが伝わってくる。
いつもと違う、どこか心許ない彼の気配。
わたしはふと、目の前の頭を撫でたくなった。そうしようと反対側の手を持ち上げる。
「……あっ、」
左腕に着けられた細い管に、思わず声が漏れた。