愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
思考停止直前のわたしに、彼は額を合わせたまま問いかける。

「おまえはどうなんだ、寿々那。やっぱり俺に奪われたことを後悔している…?」

「後悔なんてしていませんっ!わたし……ずっと自分の気持ちに気付かなかった。でもやっと…やっと気付けたんです!わたしも出会った時からあなたのことを―――でも、わたしは自分勝手な理由であなたを利用したの……それなのにあなたに愛される資格なんて……」

何をどう伝えるべきなのか上手く思考がまとまらない。上手く話せないのが苦しくて、わななく唇をきゅっと噛みしめた。その下唇を祥さんの親指がそっとなぞる。

「寿々那、難しく考えるな。おまえは俺のことが、嫌いか?」

「好きですっ…祥さんのことが好きっ…!」

「やっと言ったな」

「っ、」

口の端をクッと持ち上げた不敵な笑みを浮かべてそう言った祥さんに、わたしは彼に『言わされた』のだと気付いた時にはもう、すでに口が塞がれていた。

「んっ、」

少し乱暴に舌で唇をこじ開けられた。そのまま咥内に侵入してくることを身構えたけれど、彼はそうしなかった。
上下の唇を丁寧に舌でなぞり、時々啄むように吸い上げる。表も裏も隙間なく彼の舌に撫でられていく。

「は…んンっ……」

ほとんど表面だけの優しいくちづけ。それなのに、なぜか全身が甘く痺れて。

癒すようで、それでいて官能的。

むずむずと湧きあがる疼きをこらえているうちに、気付いたらわたしは目の前のシャツを両手でギュッと握っていた。

しばらくすると、彼の唇がゆっくりと離れた。それをぼんやりと見ていると、なぜか戻ってきた唇がもう一度わたしのものにチュッと音を立てる。

「そんな物足りなさそうな顔をされたら、ここがどこだろうと抱きたくなるな」

「だきっ…!」

思いきり反応したわたしに、彼は瞳を細めて「くくっ」と笑う。

「……いじわるですか……」

むぅっと膨れながら睨むと、彼は「からかったつもりはない」と言うが、まだ肩が小刻みに揺れている。

「もうっ!」と怒ろうとしたところで、ふとあることを思い出した。
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