愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
二人で育む未来
それから数日後、わたしは無事退院の日を迎えた。
最初『二三日』と言われていた入院は、ふたを開けてみれば倍の六日間。
四日目まではわたしの体調が中々良くならなかったせいだけど、残りの二日は祥さんがドクターに『念のため』と延長を願い出たから。
わたしがどんなに『大丈夫ですから』と言っても彼は頑として譲らなかった。
病室で目覚めたあの日、母が来たあとすぐにやって来たドクターから、わたしは改めて自分の状態の説明を受けた。
ドクターの説明によると、わたしは『切迫流産』の一歩手前。
お腹の子に異常は無く順調に育っているけれど、母体であるわたしのお腹の張りがかなり強く、このままだと『切迫流産』になってしまう。
切迫流産とは『流産になりかかっている状態』なので、もしそうなれば長期の入院の可能性もある―――とのことだ。
わたしが青ざめながら『直前に口にしたハーブが原因なのかも』と呟くと、ドクターは『それは関係ないと思いますよ』と言い、祥さんもあれはミントの葉だったと教えてくれて、わたしは少しホッとした。
ドクターは、『二三日入院して、張り止めの点滴をしながら様子を見て、張りが改善されれば後は薬を処方するだけで自宅安静も可能です』と説明をして病室を去って行った。
大事には至らなかったことに安堵する反面、危うく赤ちゃんを危険にさらすところだったのだと落ち込んでしまうわたしに、母は自分も二人目妊娠の時に切迫流産になったことを教えてくれ、『親子だし体質が似たのかもしれないわね』と言った。
それから母は居住まいを正し、『祥さん。これからも寿々那のこと、どうぞよろしくお願いいたします』と言って彼に頭を下げた。
姿勢も角度も完璧な最敬礼をした母に、祥さんも『はい、もちろんです』と返してから、同じようにお手本のような最敬礼を返したのだった。