愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
「悪いな。植物には明るくないんだ」

「いえ、別に……わたしはそういう仕事をしていましたから……」

「そうか―――じゃあ、これは?薔薇みたいな香りがする……全然薔薇の花とは違うということくらいは分かるのだが」

彼はそう言って、花に鼻を近付けた。

「それはセンテットゼラニウムです。色々な品種がありますが、中でもそのローズゼラニウムは、薔薇によく似た香りがすることで人気があります」

「なるほど、それで……」

「はい。でも実はそれ、匂いがするのは花じゃなくて葉なのですよ」

わたしの言葉に、彼は明らかに驚いた顔になった。

ゼラニウムは種類によって葉から様々な匂いがするハーブ。ローズの他にも、ペパーミント、シナモン、アップル、アプリコットなど、様々な香りを持つ種類がある。精油やハーブティのみならず、蚊よけにもなるという優れものだ。

そう説明すると、彼は「へぇ」と感心するように頷いた。

植物に詳しくないという割に熱心に話を聞いてくれる姿勢に、わたしもつい気を良くしてしまう。気が付いたら訊かれてもいないことまで、あれこれとハーブの説明をしていた。
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