愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
「……分かりました、脱ぎます。脱ぎますからそこを退いてください」

真上の人をじっとりと睨みながら、平然を装ってそう口にした。

少しでも気を抜いたら最後、一瞬で耳まで真っ赤になってしまうだろう。
そうなったらまた(・・)彼に揶揄われる。そうならないよう、わたしは必死にそれを(こら)えていたのに―――。

「なんだ?照れているのか?」

「うっ、」

「今さら恥ずかしがることもないだろう。下着姿どころか、あれだけしっかりすみずみまで見、」

「わわわわっダメっ!」

反射的に両手を上げて目の前にある口を押えたら、祥さんが大きく見開いた。

あの夜のことを示唆するセリフに、わたしの努力はあったという間に水の泡。全身が発火したように一瞬で熱くなった。きっと、耳どころかつま先まで真っ赤だと思う。

そんなわたしを見て、彼は瞳を細めてにやりと笑うと、口を覆っているわたしの手のひらをペロリと舐めた。

「ひゃっ…!」

ぬるりとした感触に慌てて手を離すと、その手を捕まえられてベッドに押しつけられた。

「なにをする、」

「こんな死装束なんかよりも、あの夜の何も身に着けていないおまえの方が何倍もきれいだった」

「っ、」

「俺の腕の中で真っ白な肌を赤く染めあげて啼くおまえのことが、あれからずっと頭から離れないんだ。いったいどうしてくれる」

「どうしてって……」

そんなこと言われても困る。

わたしだってあれからずっと、あの夜のことを思い出しては甘いときめきと羞恥の狭間で悶絶していたというのに。

掴まれている両手首が熱い。あの夜のことを思い出しただけで悶えそうなくらい恥ずかしいのに、同時に体の内側から甘く痺れるような熱が湧き上がってくる。
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