愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
驚いて身を固くするわたしをまるで宥めるみたいに、彼の舌はゆっくり丁寧にわたしの咥内を撫でていく。

焦らすように、甘やかすように。

咥内を柔らかくなぞられているうち、体から強張りがゆるゆると(ほど)け、くちづけに溺れていく。

縋るものを探すように伸ばした手を大きな手に捕まえられ、そのまま互いの指を交差するように絡ませながら、両手をシーツに縫い留められた。

自分の指の間すべてに自分のものとは違う、節くれだった硬い感触。
ギュッと力を込めるように握られて、なぜか胸の奥から熱いものが込み上げた。

甘い痺れと酸素不足に、体も思考も熱く溶けていく。

奥の奥までを味わうようにくちづけられて、息苦しいのに、なぜかずっとこのままこうしていたいと思う不思議な感覚。

あの夜もそうだった。

甘やかに、それでいてどこまでも深く―――。

わたしは彼に奪われたのだ。


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