あなたには責任があります!
 天史の肩が揺れながらゆっくりと下がり、腰も落ちる。
 女のほうはなにかしゃべっていたけど、よがっていたときより言葉が不鮮明で聞き取れない。なんとなく甘い雰囲気が、余韻から感じ取れる。双方満足したらしい。
 なにも、わたしがいるときにしなくても。
 羞恥を憤りにすり替えて、美花梨は眉間にしわを刻む。
 落ち着け。こんなことで動揺する筋合いはない。わたしには縁がないことだと悟ったハズだ。
 微妙な微笑を作って、スライドドアをそろそろと閉める。
 そのとき力が入りすぎたのか、木製のドアは柱と軽くぶつかって「コン」と音を立てて跳ね返った。
 やばい。
 身をひるがえして、美花梨はベッドに駆け戻った。音をたてないように、でもできるだけ素早く、羽毛布団に頭まで潜りこんで息を殺す。
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