悪いコの味方!


平然としている。まるで思考がぐちゃぐちゃになりそうなくらい焦っているわたしが変みたい。

キスって試せるものなの?

え、でも、やっぱりそれは変だよね?



「ん。いーよいつでも」


いつでもって言いながら誘うように手を伸ばしてくる。頰に触れた手は冷たくて、唾を飲み込む。

もしかすると、これがふつうなのかな。

わたしのふつうが、変だと思うことが、他の人や彼と違っているのかも。


だけど……触れた手から、本当に何も感じない。


わたしのことはもちろん、何とも思っていない手のひら。


知りたい。その気持ちを堪える。



「そ、そこまでしてもらわなくていいよ〜。いつか好きな人と付き合ったらするんだし」



そうだよ。わたしの夢はそれ。



「そっか。でもそのいつかが来なかったら一生経験できないけどいいの?気になってるんじゃねーの?」



気になるよ。してみたいよ。気持ちいいのかな。涙が出るほどうれしくなるのかな。心臓が破裂しそうになるのかな…って。


だけど今したらそれは憧れのものじゃない。

望んだものじゃない。



「気になるけど、好きじゃない人とすることじゃないから好きな人ができなかったら仕方ないよね」


未来なんてわからない。

15年生きていて誰にも焦がれたことがないなんて、これから先もずっとそのままになる可能性もあるんじゃないかな。

不安だけど、仕方ない。



「真篠くんは、けっこう他の人ともこんな感じなの?」

「まあ、そうだね」



そうだったんだ。


「じゃあ、真篠くんがしているのは、きっとどれも恋じゃないんだね」


それでも、女の子たちの心を動かしている。

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