悪いコの味方!
そんなきみはすごい。
すごい彼の情事は、この後から度々目の当たりにする羽目になる ────
誰彼構わず。
告白されたら付き合うし、公開同時進行。
付き合ってない子が頼んだって言うことを聞く。
同じ名前のきみは、本当にいつも女の子たちの言いなりだし、それ以上のものを与えない。
まるで何でもいいみたい。
そのうち、彼が本当に恋をしたことがないことを知った。
彼なりに愛を知ろうとしていて、その術だと知った。
わたしとは正反対。
解り合えない他人と他人。
それでも、わびしい気持ちはわかったから……わたしはきみの味方になりたいと思った。
きみにいない、唯一の存在。
それは、どこか、遠く離れた場所にあるはずの憧れと似ているような、そんな気がした。
「ましのんにフラれちゃった……」
遅刻してきたマキマキがまぶたを腫らしてそう報告してきたのは、真篠くんのお見舞いに行ってから土日を挟んだ月曜日のこと。
土曜日のデートで言われたらしい。「もう付き合えない」「気持ちに応えられない」「ごめん」と。
びっくりした。
だって、他の子たちも言っていたから。
はおりんと目を合わせる。
どうやら彼は、今までの関係をぜんぶ清算しはじめたみたい。
泣きじゃくるマキマキは家に帰した。
「勝手なやつねえ…。突然意味わからない」
はおりんがつぶやく。だけどわたしには突然のように思えなかったし、心当たりがあった。
この前のわたしとの話のせいかもしれない。
きみが、きみの術を、やめた。