悪いコの味方!


ふたりが長い間作り上げたすべて。

ちふちゃんが捨てられないって言っていたことを、彼は手放そうとしている。


その表情にいつもの作り笑いはなくて。



「追いかけてみたいやつができた」


え……



「恋とか好きとか今はまだ不確かだけど、確実に芽生えてて…このままそれをするなら、そいつとがいいって思った」

「…それをあたしが簡単に許すと思う?」


真篠くん、恋したい人を見つけたの?そうなんだ。もう、わたしと一緒じゃないんだ。

本当に自惚れだったみたい。わたしの言葉で彼が変わったなんてよく思えたよね。笑っちゃう。


彼を変えたのは、彼が望んでいたことを教えてくれるその誰かだったんだ。



「藤田もおれとの終わりなんて感じてたはずだよ」

「は……?」


「初めからおれの甘えに付き合わせてただけだろ…?親がいないとか、周りとの関係は上辺だけとか、そういうのが同じだったからおれなんかにつけ込まれて、」


「ましのんだけのせいじゃないよ、そんなの…あたしだって甘えてたし…それに今も手放すのがこわいよ。ずっと一緒にいてよ……恋なんてしないで。変わっていかないで」



か細い声。強いと思っていたちふちゃんは、真篠くんの前ではこんなにも小さいんだ。

そうなれる人だったんだ。

それは、手放した後が、こわくなっちゃうよね。

やっぱり一緒にいるべきだよ。真篠くんだってちふちゃんの前では取り繕うこともなかった。


恋ってそんなに大事?

自分のことを求めてくれる人がいるのに。


もう一度考え直してもいいと思う。

もっとじっくりふたりで話し合って……なのに、それでも足が動かない。声も出ない。いつもみんなにお節介ばかりしちゃうのに、それができない。

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