悪いコの味方!
追いかけなきゃ、と思っていたら手首を掴まれた。
「おれが行くからいい」
「だけど…」
「まだ話終わってないし、全部伝えられてないから」
そうだよね。ふたりの話し合いに首を突っ込んで邪魔してしまった。でもお節介なんかじゃない。もっと別の理由。
「真篠くん……今まで自分のこと鋭いほうだと思ってたんだけど、鈍感なのかなあ…」
「は?本気で言ってる?すげー鈍感っしょ」
「うう…」
本気もいいところだったよ。
「……ねえ、今感じたこと、言ってもいい?」
ずっと気づかなかった。
できることなら気づきたくなかった。
だけどきみが気づかせてくる。
知らないフリをできるほど器用じゃない。
「真篠くんが本気で誰かを想うなんて、嫌。きみがしてるのは、いつも、今も、……それは恋なんかじゃない」
正解はわからない。
だってこれはきっとわたしの願望だ。
みんなもこうなんだね。
誰からも教わらないことを、自分なりに覚えていく。
「そんなふうに捉えたいって思った。こんな不誠実な気持ちで……味方にはなれない」
ごめんね。優しくできなくて。応援できなくて。けっきょくわたしはみんなと同じで、真篠くんを大切になんてできないんだ。
本当はちふちゃんのところにも行ってほしくない。
羨ましい。
羨ましいよ。
真篠くんにとってたったひとりの存在になれる人が。
誰も手に入れられなかったもの。
きっとわたしがずっとあきらめていたもの。
わたしを呼び止めた手は震えていた。真篠くんだってちふちゃんを手放すこと、こわいに決まってる。
彼の強がり。
それに優しい言葉すらかけられなかった。