悪いコの味方!


「彩夜架、聞いて」



手を握られて、真剣な声で呼ばれる。



「彩夜架がさやに求めてる本当のことは、彩夜架ひとりじゃ叶えられない。ふたりで知って叶えていくことなんだと思う。それができるように、彩夜架はさやに自分の気持ちをぜんぶ伝えなくちゃならない」


「でも、まとまらない…自分でもよくわからない……わたしが鈍感だからなのかな…」


「それを理由にしたらいけない。甘えちゃだめだよ」



真篠くんに、ちゃんと話さなきゃ。自分のこと、もっと自分で知らなくちゃ。


「牡丹くんは真篠くんを大事に思っているんだね」

「え、なんで」

「わたしが真篠くんを傷つけないように教えてくれてるんでしょう。ありがとう」


傷つけてばかりだけど、本当はそんなふうにしたくないの。できることなら隣にいて、作り笑いじゃない笑顔を見たい。

意地悪されたっていい。優しいこともわかってる。


「…俺ね、これでもむかしは心許せる友達もいなくて、嫌われたくないくせに、他人なんてどーでもいいって思ってたんだよね」


恥ずかしそうにつぶやく。意外だ。そんなふうにぜんぜん思えない。


「でもさやとゆると話すようになって、大事にしよって思った。だからあいつらのことちゃんと見ようとしてくれてる彩夜架のこと……好きだよ」


握られた手にちからが入った。


好き、という不意な言葉。

それの意味を問いかけるにはあまりにも不確かで、不純で、不要な気がした。


「ありがとう…牡丹くん」


手を握り返す。

こんなことしかできなくて、ごめんね。


誰かに初めて好きだって言ってもらえた。


とても、うれしいことなんだね。


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