悪いコの味方!




ちふちゃんと廊下ですれ違った。

隣にいたゆるるが「いいの?」と覗き込んでくる。いいわけがない。

話したい。

ちゃんと…まずは、友達に。



「ちふちゃん待って!話したいことがあるの……聞いてくれないかな」


呼び止めると振り向いてくれた。

聞いてくれるみたい。優しいね。


「わたし……ちふちゃんの言う通り、鈍感なんだと思う。わからないことだらけだし、わからないままにしちゃってた」

「…で、わかったの?」


色のない声。怯んじゃだめだ。

仲良くしたい。

わかってもらいたい。



「うん……たぶん、わたしね」



同じ名前の男の子。

何度も邪魔したオトナキラリシーン。

彼に触れて触れられる女の子たちに憧れた。


わたしはそうなれないって思った。


それでもたったひとつの存在になりたくて味方になると言った。


彼が人を傷つけて傷つくのが悲しかった。

それなのに彼が一途になろうとした途端に、引き止めたくなった。


誰のものにもならないでほしい。

きみがしてるのは恋なんかじゃないと思いたい。


……わたしが、隣にいたい。



「真篠くんのことが、好き」



答えはすごくシンプルで、生まれて初めてわたしのなかに浮かんだ気持ちだった。



ちふちゃんは長いまつげの影を頰に落として「そう…」とつぶやいた。

気づかない、知らない、わからない、わたしには無理だって、甘えていた。ちふちゃんが彼を想う気持ちに不誠実だった。


話したら自己満足かもって悩んだけど、言いたかった。


背中を向けられる。

やっぱり、言わないほうがよかったのかな。


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