悪いコの味方!


ただの言葉じゃなかった。


「好きなんだ」


友達としてのものでもない。



「あの、わたし……」


心配ごとはある。不安だらけ。

叶わないと思う。

真篠くんが他の人を想いはじめたって考えるだけでつらい。真篠くんへの気持ちをみゆたんたちに話した時の反応がこわくてたまらない。

友達を大事にできそうにない自分が、きらい。


それでも、誠実でありたい。



「わたしは……」


ぎゅっと誰かに抱きしめられた。


「よかったね彩夜架…!」

「恋がしたいって言ってたもんね!やっぱり彩夜架のこと好きになる人は絶対にいるって思ってた!」

「自分のことみたいにうれしい!おめでとう!」


あたたかな腕の正体はみゆたんとマキマキだった。


ふたりが並んでいる。
最近の距離感がうそみたい。

このままでいたい。

ふたりのこと悲しませたくない。


わたしのことなのにこんなに喜んでくれる。

ふたりの気持ちや期待を……壊したくないのに。



「…彩夜架?」


はおりんが目を丸くする。

気がつけば泣いていた。恥ずかしくて、すぐに拭ったけど次々と溢れてくる。


「ごめ…っ、わたし……」


違う。謝る人は、牡丹くんだ。

わたしなんか、取り柄もない。どうしてわたしを好きになってくれたのか不思議だよ。

鈍感で、人のこと、傷つけてしまうのに。



「牡丹くん、わたし、ほかに好きな人がいるの……やっと気づいたの。誰より、大事にしたいの」



真篠くん。

浮かぶのは、きみがわたしに見せてくれる笑顔。


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