悪いコの味方!


すると突然、浮かんだ人が目の前に現れた。

びっくりしているうちにまぶたの涙を拭われる。優しい指先だった。


「牡丹」


低い声。守るような背中。


「こいつのこと泣かさないで」

「いや……彩夜架の涙、それさやのせいだから」


ちょっと待って。真篠くんのせいじゃない。わたしが勝手に不安がって、あきらめたくなって、でも伝えたくてどうしようもなくて…溢れ出しただけ。


こっちを見た真篠くんは、少し悲しそうで。



「違うよ。真篠くん、わたしは、真篠くんの言葉や行動や過去で傷ついたりしない」


たとえきみが、恋をしても。



笑ってみせるよ。

味方になる方法を探すよ。

だってきっと、これがわたしの恋だから。



手首を掴まれた。


「まし……」


彼が駆け出す。引かれるまま、わたしも駆け出す。

周りの視線や声。そういうものから逃げてふたりだけの世界を探すみたいに外に出た。見つからなくてそれでも走る。しゃべらなかった。着いていくのに必死だった。


このままいれたらいいのに。

真篠くんが、わたしのものになってくれたらいいのに。


願うくらいゆるしてほしい。

ちゃんと伝えて、きみのことを応援できるような、わたしになるから。


ちゃんとなるから。



彼が立ち止まったのは、駅から反対方面にある花畑の丘だった。

息が切れる。


「なんで…ここに……?」


前はみゆたんたちと来た。2回目。町が遠くまで見渡せて、工場の白い煙突が3本並んでいるのも見れる。

その奥で光る夕焼けが、咲いてるコスモスを照らしていて、きれいだった。


「好きそうだと思ったから。…初めて来たけどうわさ通り眺めいいんだな」


意外な言葉。デートスポットなのに初めてなんだ。

< 167 / 351 >

この作品をシェア

pagetop