悪いコの味方!
そんな人のこと振っちゃった。
「ん」
目の前で腕を広げている。首を傾げるとしかめっ面をしながらちょっと笑った。
「胸貸す」
「なんで…?」
「そうしたいから」
それならいいか。と、おずおずと腕の中にいく。
この前思ったんだけど、真篠くんが抱きしめてくれると、わたしってけっこう小さかったんだなあって思うの。
ひとりじゃ知ることはなかった。
「真篠くんの心臓って、ちょっとはやいんだね」
人の心臓の音なんて初めて聴いた。
「…おまえと近いからじゃない?自分でもわかるけどこんなになるのこの前が初めてだったし」
「そうなの?…いいね。たっぷり眠れそう」
「子守唄かよ」
それはいいなあ。いつか、眠るときに聴きたい。
ぎゅっと目をつぶると、溢れていた涙がこぼれた。それは止まることなく次から次に流れてきて、くちびるを噛む。
「牡丹くん…大丈夫かな」
「平気だろ。今なぐさめてもらってるだろうし」
「そうなんだ。そうしてくれる人が傍にいるならよかった」
声が震える。
みゆたんにもマキマキにも、誰か、わたしができないことをしておいてほしい。
何様なんだろう。
でも、心からの願いだよ。
「ごめんな」
囁かれたそれは、淋しい、孤独な言葉だと思った。
きみのせいじゃない。
そう言ったって、首を横に振ったって、どうしたって、もう自分を責めるんだろうね。
真篠くんだって恋を知りたかっただけなのに。自分のこと間違っていたって思っている。
正解なんて何処にもないよ、きっと。
わたしも知らないから、そんなのはもういいよ。
ごめんなんて言わないで。