悪いコの味方!
「あのね。恋ってむずかしいなあって思ったよ。自分のことなのに気づけなかったり、気づかないふりしたり、何もしていないのにあきらめたりしてた。それでも今は…相手の心臓の音に耳を澄ませて、あたたかいなって思って、自分の心臓もはやく動き出したのを感じられて。ひとりじゃ、知らなかった」
腕の中で見上げると、長いまつげはわたしのほうを向いていた。
きみがそんなに優しくわたしを見てくれることも、この気持ちが重なり合わなくちゃ知らなかった。
「わたしたちが知りたかったことは、ぜんぶ、ひとりじゃむずかしかった」
涙を拭ってくれる。
なんだか、彼のこと、好きだと思っていなかった日のことが思い出せない。
「真篠くんと両想いになれてうれしい。…人生で一番うれしい。きっとしんじゃう時まで憶えてる」
「来世まで持っていきそうな勢いだな」
「そうなったら、いいかも」
抱きしめてくれている腕のちからが強まる。
安心する。ひとりじゃないって実感する。このまま一緒にいてほしい。
「ありがとう」
あ。
孤独が、少し晴れた気がする。
「こちらこそ。来てくれてありがとうね」
「いーえ」
泣いちゃったけど、きみがなぐさめようとしてくれるもんだから、仕方ないよね。
失ったものがある。
それは自分のせいだ。
今ならみんなの恋する気持ちが解るのに、語らうこともできなくなった。
それでも、抱きしめ返した。
離したくないと思った。
そういう存在と出会ってしまった。