悪いコの味方!


次の日、初めて真篠くんと一緒に登校した。駅前で待ち合わせして隣に並んで歩いた。

いつもどんなふうに歩いてたっけ。

緊張してわからなくなって、ついには自分の足につまずいて転びそうになる。


それを彼が支えてくれた。

ひとりだったら転んでた。


「そんなゆっくり歩いてたら遅刻になるよ?」

「あ、ごめん!」

「おれはべつにいーけどね」


いいのかよ。優しいのか、なんなのか。



「イチョウの葉っぱがきれいだね。歩くたびかしゃかしゃ言う」


もうブレザーだけじゃ寒くなってコートを羽織りはじめたし。


「もっと寒くなったら、手、繋ごーよ」

「う、うん。準備しとく」

「ははっ。そうして」


ちゃんと猶予をくれる。ちゃんと理由もくれる。

なんなのか、じゃなくて優しい。



だけど周りの声はあまり優しくなかった。



学校に近づくにつれて、視線が強くなる。「ましーが女の子と来てる」「付き合い出したの?」「本当だったんだ」って話し声もする。視界の隅でしゃがみ込んでおそらく泣きはじめた女の子もいて思わず立ち止まる。

どうしよう…。


真篠くんと何度か保健室で見た子だ。

鞄からハンカチを取り出したけど、すぐに戻した。わたしが泣かしているのに出来ることなんて何もない。


肩を叩かれる。
彼が眉を下げた表情でこっちを見た。


「先に行ってて」


そう言って泣き崩れる女の子のもとに駆け寄っていく。

ちゃんとしようとしている。

どうか彼が悲しまないように。そう願いながら、ひとりで校内に入った。


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