悪いコの味方!




「帰ろ」


支度をしていると真篠くんがそう話しかけてきた。

教室が今朝と同じように静まり返る。


「あ、うん。ありがとう」

「ははっ。何がだよ。おもしれー」


お腹をまるめてけたけたと笑いはじめるからちょっとびっくりしちゃう。だってありがとうって何故か思ったんだよ。



「真篠くんってそんなに笑う人だったっけ?」


ここ数日のきみは楽しそう。



「……おまえと話してるからだろ。そんなことより早く行こ」



そんなことではない。きみって時々すごいことを言う。わたしは時々、すごいことを言ってもらう。

うれしくて死んじゃいそう。

今日一日耐えていた涙が引っ込んでしまった。単純だね。


「おまえが好きそうなごはん見つけたから、お腹空いたらそこ行こ。それまで街ふらふらする。今日はそうするから」

「考えてくれたの?」

「や、そこまでじゃないけど」


酷い人間なのにこんなに喜ばせてもらっていいのかな。


ふたりで教室を出る。



「朝の子…解ってくれた。そうやってちゃんと話して、周りに解ってもらうから、時間ちょーだい」



大事にしたい。うまくできるかな。

すでにわたしはすごく大事にしてもらっている。



「うん。わたしもがんばるね」

「おー」



真篠くんとわたし。ふたりで一緒にいるために、きっとたくさんがんばることがある。耐えることがある。

だけど離したくないよ。どう考えても、そんな思いにたどり着くんだ。


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