悪いコの味方!




秋風のなか学校に行くと、下駄箱に紙が入っていた。黒いペンで大きく書かれた、別れろって文字。


びっくりして思わず眺めちゃった。すると後ろから影ができて、真篠くんと一緒に登校してきたことを思い出す。



「なにそれ。…おれのところにはなかった」

「いやあ、好きな男の子にはしないでしょう。ちょっと待ってね」



ノートの切れ端に書かれているから、ペンを取り出して隅っこに水色の文字を書く。



「何してんの」

「返事書いてるの。別れませんって。顔も名前もわからないし、また明日も入れてくるかもしれないからちゃんとわたしの気持ちを知ってもらえるようにしてる」

「泣かないの?胸かすよ?」


「これくらいじゃ泣かないよ。こんなことする人いるんだなあって客観的な気持ち」


悲しくもないかもしれない。


「誰がやったとか気にならない?おれはけっこう気になるし、やめてもらいたいからわかったら言いたい」

「でも誰がやったか知るのは、ちょっとこわいなあ…」


悪意をはっきり向けられたのは初めて。

こういうふうに思って、行動する人もいるんだ。


客観的に思えるのは誰にされたか検討もつかないから。楽だから、このままがいい。



「ペン貸して」



ペンケースから彼はピンクを取り出した。


「何するの?」

「おれも書く」

「ええっ。真篠くんから手紙が来たらうれしい!」

「何言ってんの……はい。これどうするの」

「中に戻すよ。それしかないでしょ」


ピンクの文字を見て、ちょっと笑ってしまった。“できれば今回だけにしてください。ごめん。真篠”だって。

ハネトメがきっちりされた綺麗な字。


一緒にこうしてくれるの、ちょっとうれしかった。


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