悪いコの味方!
「言っとくけどあっちは私に流されてるだけで、私のことが好きなわけではないよ」
「えええ…そうなの…」
難しいものだね。でも…ゆるるっていろいろ、大人だったんだね。すごくどきどきしてきた。
「というか、流されてるって何?ゆるるは川なの?」
「川…ふふふっ。彩夜架って本当におもしろいね。発想がおもしろい」
ほめられた。不意打ち。
「そう、川なの。牡丹って優しいから押しに弱くて、おまけに私を断ったらもう仲良くできないんじゃないかって不安に思うように仕向けて、それを利用して、自分のこと好きだと思ってない好きな人と寝た」
同じホットココアを飲んでるはずなのに。
カップのフチに指を沿わせる仕草。何もしていないまつげの影が白い頬にかかって…大人なドリンクを飲んでるみたい。
「さやの周りにいた女の子と同じ」
「……」
「でも、それでもいいんだよね」
いいって顔してない。でも、何かを言える立場でもない。
何も言えない。
悩んでいるのはわたしじゃなくて、ゆるるのほうかもしれないのに。
ふっと息を吐くように笑う。
「好きな人とキスしたり身体を重ねたりするのってとても素敵なことだなあって思うよ」
悩んでいる友達は、それがもう当たり前のような、慣れているって態度で、なんてことない素振りをする。
「彩夜架のペースでいいと思う。だけどいつか、もう自分でも信じられないくらいこの人と一緒にいたい、離れたくないって思ったら、その瞬間を大切にすればいいんじゃないかな」
わたしは恵まれている。
優しくしてくれる友達がいる。
頷くと、ゆるるは「さやをよろしくね」と笑った。