悪いコの味方!
お父さんは複雑そうにしつつ、だんだんお酒も入って真篠くんと談笑していた。
透架は真篠くんが読者モデルをしていることを良いようにして、自分が持っている服を見立ててほしいと言い始めて自分の部屋に連れ込んでいたし。おしゃれに興味あったなんて知らなかったよ。
「ご馳走さまでした。家でしゃぶしゃぶしたの初めてでした」
たしかに、あのホームの人数がいたらできないのかもしれない。
「真篠くんのお家だと思っていいから。また来てね」
「はい。ありがとうございます」
玄関を出る。
「送る!」
「危ないからいい」
「コンビニまでなら大丈夫だよ」
「そ?ありがとう」
住宅街の街灯のある道を進む。
「そうなんだろうな、とは思ってたけど…なんか、あったかい家だったね」
「そうかな。そう言ってもらえてよかった」
「この道も好き。似た家が並んでるんだけど、植えられてる花とか、電気のかたちとか、ドアの色がちがって」
そんなところ、あまり見てない。
言われてみればそうだなって思うくらい。真篠くんはよく気付くなあ。
「お母さんたちも言ってたけど、また来てね」
「…うん。ありがとう」
「おやすみ」
名残惜しかったから、一緒にいられてうれしかった。
そう思っていたらぎゅっと抱きしめられた。
「真篠くん?」
「なんかさ。…同じになれたらいいのにって思った」
「何が……」
おでこが重なる。
あ、もしかして、と目を閉じると、頬をつままれた。
「おやすみ」
あれ。キスじゃないよって笑わなかった。いや、笑っていたけど。
あたたかいとか、優しいとか、きれいとか。
そういう言葉はわたしの中には良い意味しか存在していなくて。
いつもは何度か振り返る姿が、今日は一度しかなくても、きみの気持ちにわたしはどうしても気付けない。