悪いコの味方!


こわい。

真篠くんがいなくなったらどうしよう。


「ゆるる、連絡ありがとう。もし戻ってきたら教えて」

「彩夜…」


電話を切る。真篠くんに連絡をしながら家を出た。

駅、学校、施設の近く……透架の自転車で駆け回る。電話にもメッセージにも何も反応がない。どうしたらいいの。


見つけたい。

一刻も早く顔を見て安心したい。


ひとりにしないで、って、そんなすがるような気持ちだった。



「……真篠くん」


彼の後ろ姿を見たのは、あのはじまりの丘だった。

夜は冷えて、綺麗な景色も存在しないんだね。曇っているのか星も見えない。

静かに振り向いた。どんな表情をしているのか不安だったけど、それが的中したみたいに作りものの笑顔を浮かべた。


「…はは、おまえが化粧してないの初めて見た。あどけなくてかわいーね」

「は!大変!しかもパジャマだった!」


着替えも化粧も頭からなくなっていた。今まで大事にしていたもの、ぜんぶ真篠くんに掻っ攫われてる。


「ごめん。心配かけた?」

「当たり前だよ!だからこんな恰好なんじゃんか…」


隣に座る。こんな、ベンチの隅っこにひとりでいて。

きみってやっぱり孤独から抜け出そうとしていないんだね。


ゆるるに見つけたことを連絡した。

心配してる人がたくさんいること、気づいてない。


「母さんが来てさ」

「…うん」

「今までごめんねって言ってたらしい。会わなかったけど」

「……そう」


手を握られる。冷えた手。でもわたしもそうで、あたためてあげることができない。


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