悪いコの味方!


「今更なんだよ。あやまってほしいわけでもない。あやまられたって、じゃあなんで…って思うだけ」


勝手な感情に彼は振り回されてきた。

理解できないことに、悩んで傷ついて、こうしてひとりでいる。こんな自分の気持ちは誰も解ってくれないって思ってる。

その通りで。

わたし、誰の気持ちも解らないの。


「真篠くんは、お母さんに対してどう思ってるの?できれば教えてほしい」


想像や憶測だけじゃ何もできない。

真篠くんのことも、みゆたんやマキマキや他に傷つけちゃった人たちのこと。



「…簡単に言うと、嫌い」

「嫌い…なるほど」

「なんで子供のこと捨てられるんだよって思うし、その理由を言われても、それが同情できるものだとしても謝られても、許すとかできない」


わたしも、それは同じ。ゆるされないことだって思う。


「だけど……それでも、親だって思うと憎みきれなくて……」


小さい頃の真篠くんに会えたらいいのに。

そうしたらわたしが代わりに抱きしめたい。なんでもする。大好きだよって何回も言う。


だけどそれはできないから、今のきみを抱きしめた。

何度もぎゅっとちからを込めた。


「真篠くん、好きだよ。好き。大好き……」


何も言えなくてごめんね。
こんなことしかできなくてごめんね。

聞いてるよ、と言うかのように首を縦に振るきみ。くっついてるのに、いつまでも温かくできない。



わたしがわたしじゃなかったら。ちふちゃんだったら。ゆるるだったら。他の子だったら、もっと違う言葉をかけられたのかな。


彼を孤独から救えるような……そんなちからを、持てたのかな。

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