悪いコの味方!


可愛い、爽香さん。あの美しい大人気な女優さんとは思えない。ギャップ萌えってそういうことだ。…というかね。


「昨日会ったの?」

「あーうん」


秘密主義は変わらない。

けど事後報告でもしてくれるってことは、ちゃんと話せたんだろう。


「どんなお話したの?」


少しどきどきしてる。きみが悲しいことじゃなければいい。



「一緒にニューヨーク行かないかって誘われた」

「ニュ!!?」



ところが。予想を大幅に上回る内容に目の前がシロクロする。

ニューヨーク?わたし的には自由の女神よりブルックリン橋やメトロポリタン美術館が気になるし密かに憧れているファッションの国…のニューヨーク?


「あいつ、けっきょくおれに自分の仕事手伝わせてラクしたいだけだった。家族の時間?ただコキ使えるアシが欲しいだけだろ」


苛立ちを浮かべる口調。…その中に、飛び跳ねそうなくらいの嬉々とした空気を感じる。


「で、でも…行くの?」

「勉強…しにいこうと思う。技術全部もらってくる」


昨日の今日。

それなのに彼の意志は自信を帯びて固まっていて、その背中を支えているのが爽香さんだということに気づく。


こういう繋がりも、築けるものなんだ。


みんな、こんな出来事が突然起きたらどうしてるんだ?

彼氏のしたいことを応援できない彼女ってどうなの?


だけど…だけどこんな唐突に言われたって!昨日の今日だよ?もうちょっとくらい考えない?真篠くんの自由な性格は好きだけど…淋しいよ。

どうしよう。引き止めたい。行かないで。ファッションの勉強なんて日本でだってできるじゃない。


「う……」


こんな今の気持ち、言いたくない。

さっきまで楽しかったのに。


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