悪いコの味方!


結果的には楽しい遠足になったなあ、とのんきに思いながらバスに乗り込む。ゆるるの隣に座ろうとしたら後ろから首根っこを掴まれ別の座席に投げ入れられた。


痛くはないけどびっくりして見上げると、隣の通路側に真篠くんがどかっと雑に腰掛ける。


その横顔はくちびるを尖らせて不貞くされていた。



「え、え……ゆるるの隣に座りたかったのに…」



それなのにこの男何の意味を含めてこの行動をした!?理由によってはゆるさない。家に帰るまでが遠足なのに。


文句を言いながら問い詰めようとしたらじろりと睨まれる。睨みたいのはこっちだよ。


そもそもさっきの今でちょっと気まずいんですよ。



「さっき」



ぼそりと落ちてきた言葉に気まずさが増す。やっぱり部外者なのに言いすぎた?どうしよう、真篠くんに嫌われたら。なんであんなこと言っちゃったんだろう。


恋愛の仕方なんて人それぞれ。真篠くんには真篠くんのかたちがあって、それをとやかく言える立場に、わたしは全くいないのに、女の子遊びの仕方を考えろ、なんて。


恋愛したことないわたしが何言ってるのって。



「悪かったよ。もし何かあったら言って」


「……何かって…」


「イヤガラセされたり」


「悪かった、って…?」



イヤガラセなんて負けないよ。真篠くんが心配することじゃない。



「巻き込んで」



深い黒目がわたしを映す。静かな時間だった。


謝ったり心配したり、反省できる人。そんな真篠くんはどうして女の子遊びをするんだろう。


彼が好きになるのは、どんな人なのかな。


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