悪いコの味方!
「ゆる以外に初めて見たよ、あんな気楽なさやの姿」
他の2人がお手洗いに行っている間、牡丹くんはちょっと含みを持たせた口調でそうつぶやいた。
「そうかなあ。べつに彼女じゃないし、友達でもないみたいだからじゃないかな」
「彩夜架の持ってる空気がそうさせてるんだと思うよ。さやもゆるも人に一線引く癖あるし」
おお…牡丹くん、わたしが思ってはいたけど核心がなかったことを言うね。
やっぱりそうなんだ。
何かがあるんだ。それはきっと彼らにとっては何も特別じゃないこと。だけど大きな、何かへの理由。
わからないことだらけだし、知る機会はないだろう。知る理由が見つからない。
でも、できることがいつかできたらうれしいかも。
「牡丹くん、ありがとう。真篠くんに男友達がいると思ってなかったよ」
彼の周りにはいつも女の子がいて、男の子たちはなんだか遠い人を見てるような目をするから。
真篠くんはいつもちょっと退屈そう。
そんなこと言うとおこられるから言えないけど、本当は無邪気で年相応なところばかりなのにね。
「あ、戻ってきた」
「彩夜架」
2人が視界に入ると同時に、牡丹くんはちょっと抑えめの声で名前を呼んだ。
「今度こそ連絡するから2人でどっか行こうよ」
「…えっ」
「デートの予約ね」
たぶんモテる。絶対にモテる。モテる人は言うこともやることも違うし、話の流れ、おかしいでしょ…!
真篠くんといい牡丹くんといい、女の子を振り回すのが上手なんだ、きっと。