私の短い恋の話
まだ、寒い4月の春。
無駄に広い体育館に30~40代の男女の先生が入ってくる中、1人、学生と言われたら納得してしまう男性が居た。
「あの人、かっこいい……」
私は放送部に所属していたので放送器具が置かれている2階からその人を見た。
新任の先生は次々と1人ずつ、挨拶をしていった。
「初めまして、樋口椿と言います。 新米ですがよろしくお願いします」
先生は自分の名前の他に趣味などを話した。
「椿先生か……」
私は先生がステージから下りるまで見ていた。
「樋口先生、かっこいいよね!」
私は親友で同じ部活の奏に言った。
「そう?」
奏は不思議そうに私を見ながら言った。
放課後になり、私は靴箱に向かっていた。
(奏はバレー部の手伝いで行ってるから、帰るの私1人だけか……)
私がため息を着くと、靴箱につながる扉から樋口先生が出てきた。
「こ、こんにちは!!」
私は緊張と驚きで、声が裏返った。
「こんにちは」
先生は笑顔で言ってくれた。
(次、何話せば…)
私は動揺して、頭が回らなかった。
「2年生の教室ってどこにあるか分かる?」
「は、はい! 2年生の教室は3階です!」
「ありがとう。 この学校広いからどこかわかんないよね」
「ですよね! 私もそう思います!!」
「共感してくれる人が居てよかった。 気をつけて帰ってね」
「は、はい。 さよなら」
先生は私の横を通って、階段をのぼって行った。
「かっこよすぎる……」
私は小さな声で言った。
これが人生初、私が一目惚れした人だ。
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