世界が終わるとき、きみを見つける

記憶は吹君のフルートでいっぱいになった。

聞きほれてしまうような柔らかくて美しい音。

こんな音が出せたらな。

吹君が、うらやましい。

「......ん、日音!」

「ふぁあい!!」

変な声が出た。恥ずかしい。

声の方向を見ると春乃がこっちを見ていて、ほかのみんなは立っていた。

あ、

合奏のあいさつ、私だった

「忘れてた......」

「日音......。ほんっとに変わんないよね......。」

「う、ごめん......。」

音楽室が笑いの渦で満たされる。

淡い桃色の霧。

その中でたった一人だけ、吹君だけが見たことのない色の霧をまとて立っていた。
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