天城兄弟、お見通し。
「すぐ作るから待ってて。蓮斗も、漫画読んでて大丈夫だからね」
手を洗い、リビングに入ってすぐ。そう言うと、蓮斗は「ん」と短く返事をしてソファに腰掛けた。
ごそごそと袋を開けて漫画を取り出している。
早く読みたくてしかたなかったんだろうなぁ。
発売日に買いに行くくらいだもん。
蓮斗の表情筋はあんまり豊かなほうではないけれど、それでもなんとなく嬉しそうな様子は伝わって来た。
蓮斗から目を離し、制服の上からエプロンをつけてさっそく料理に取り掛かる。
美味しいものを食べると幸せな気持ちになるし、自分が作ったものをおいしそうに食べる人を見るのも嬉しいから、中学生の時にはすでに料理がすきだった。
……まあ、まさか同じ学校の有名人に毎日手料理を振舞うことになるなんて想像していなかったけれど。