天城兄弟、お見通し。






「うーるーちゃん」

「っわ、」



無事ごはんを作り終えてお皿に盛りつけたタイミングで、ずんっと肩に重みを感じた。

腰のあたりに回って来た手がわたしの身体をホールドする。


いわゆる、バックハグってやつ。



鼻腔をくすぐるムスクの香りと、「うるちゃん」という呼び方で、抱き着いてきたのが誰かなんて振り向かなくてもわかること。




「ちょ、な、ナナくんっ」

「んー、今日もすっごい美味しそう」




……すぐくっついてくるところは、ナナくんの悪いくせ。

男の子と至近距離で関わることにそう耐性がないわたしの反応を見て楽しんでいるんだろうなってことには、最近ようやく気づいた。



「ご、ごはんできたから……離れて」

「えー」

「えーじゃなくて…っ、うぅ」



耳元で響く低温ボイス。首筋を掠めるふわふわのマッシュヘアーがくすぐったくて身体を揺らすと、ふ、と小さく笑う声が聞こえた。


爽やかで人懐っこくて誰にでもやさしいナナくんだけど……本当は結構、意地悪だったりする。



わたしばっかり振り回されるのも癪だから、なるべく気にしていないふりを装って出来上がった料理を運ぼうとお皿に手を伸ばす──と。


ナナくんの右手が伸びてきて、わたしの手首を掴んだ。捕まれたところからナナくんの体温が伝わって来て、心臓が脈を打った。


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