天城兄弟、お見通し。
「あの……、本当に好きなんです、蓮斗くんのこと」
「はあ、どうも」
「それで、あの……付き合ってほしくて…」
天城兄弟は毎日告白が絶えないって噂だったけれど、こんなふうに現場に直面するのは初めてだった。
黒くて艶やかな髪が印象的な女子生徒。
ちらりと見えた顔は可愛らしくて、ザ・女の子って感じがする。
「俺、今は誰とも付き合う気ないから」
「そ、そっかぁ……」
「うん。だから、ごめん」
そんな声が聞こえた瞬間、覗き見したことを少しだけ後悔した。
……振られちゃったんだ、あの子。
たくさんの勇気を振り絞って伝えた気持ちが叶わなかったあの子の気持ちを考えると、わたしも悲しくなってくる。
誰かに恋をするって、どんな感じなのかな。
誰かに恋をしたこともなければ、異性とトクベツ仲良くすることすらないわたしには想像もつかない感覚なんだろうな。
その人のことを考えただけでドキドキしたり、その人のためにかわいくなりたいって思ったりするのかな。
わたしもいつか、そういう人に出会える日がくるといいなぁ──……
「うるちゃん、覗き見よくないよ」
なんて、そんなことを考えながら告白の様子をまじまじと見つめていた時。
ふと、後ろからそんな声が落ちてきて、わたしは反射的に振り向いた。