エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
「それでも羨ましいなぁ。八神先生と結婚できるなんて。お嬢さまは得ね」

「そうよね。でも私、八神先生はもうひとりの方のお嬢さまと結婚するんだって思ってたんだけど。ほらよく来てたじゃない。ユウキ製薬の社長の娘が」

「ああ、あっちね」

 うんざりしたような相槌が聞こえた。

「美人だけどすっごくキツいって受付の友達が言ってたよ。私も一回見たことがある。八神先生に会えないとめちゃくちゃ八つ当たりされるの。あれは無理じゃない? 絶対に奥さんの方がいいよ。優しそうだったし」

「まぁね」

 女性は一旦そこで納得する。でもすぐにまたなにかに気がついたように口を開いた。

「でもさー確かに奥さんの方は優しそうな人だったよ。大人しそうだし。だからって結婚相手としてはどうかな」

「……どういうこと?」

「だって、ほら。ずっと入院してたんでしょ。私はナースじゃないから、病気のことはわからないけど、先輩の話では難しい病気でちょっと前までは治る見込みもなかったんだって。そんな人が……夫婦生活できるのかな」

 少し声を落として意味深なことを言う彼女に、もうひとりの女性が同意する。

「あー、そっちね。……確かに。少なくともあの八神先生を満足させられそうにはないね」

「でしょ?」

 ひどい言葉だが、あながち間違いではないその指摘に千春の胸がズキズキと痛んだ。
 女性がため息をついた。

「先生お気の毒……。先生ならどんな女性もよりどりなのに……」

「ま、その辺はうまくやるんじゃない? 先生なら、結婚してても相手には困らないでしょ。ていうかすでに何人かいたりして!」

「やーん、私立候補したいー!」

 そう言ってふたりは笑い出す。
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