エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~

清司郎の思い

 黒い髪をかき分けて白いうなじに唇を寄せると、そこはしっとりと湿っていた。
 えもいわれぬ甘やかな香りを吸い込むように口づければ、千春が甘い吐息を漏らす。
 小さく震える細い身体を後ろから抱きしめて、清司郎は囁いた。

「怖い? 千春」

 一旦ぴくりと静止して、ふるふると首が横に揺れる。
 清司郎は笑みを浮かべて、うなじへの愛撫を再開した。
 ちゅっちゅっという音がだけが静かな部屋に響く。

「あ……清君……」

 少し高くて柔らかい千春の声が、清司郎の耳をくすぐった。こうやって彼女に"清君"と呼ばれると、持てる力のすべてをかけて、なんでもしてやりたいという気持ちになる。
 自分は彼女とともに在るために生まれてきた、そんな気さえするくらいだ。

「なに? 千春」

 黒い髪に顔を埋めたまま、清司郎は問いかける。
 千春が戸惑うように口を開いた。

「だって、っつ……よ……読み聞かせの練習は?」

 今夜彼女はいつも通り絵本を抱いて清司郎の部屋へ来た。
 清司郎だとて、まずはそれを聞いてやるつもりだった。
 だが、ベッドに座るなり嬉しそうに話しはじめた彼女に、たまらなくなってしまったのである。
 仕方がないだろう、と清司郎は自分自身に言い訳をする。
 はじめて子供たちの前で読み聞かせをしたと言って弾けるような笑顔を見せた千春。
 そんな笑顔を見せられて、冷静でいられるはずがない。
 頭の中でなにかが外れる音を聞きながら、清司郎はすぐさま彼女に口づけた。そしてそのまま真っ赤に染まる頬と耳、そしてうなじへ本能のままに愛撫を続けている。

「読み聞かせは、成功したんだろう?」
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