エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
 そして、また深く口づける。
 何度口づけてもどこまで深く入り込んでも満たされることはない千春とのキスに清司郎は溺れてゆく。
 唇が離れたその瞬間からまた口づけたい衝動に駆られる。もう彼女とのキスなしに自分は生きていけない。
 唇と、耳と首筋に愛撫を繰り返しながら、清司郎は服の上から千春の身体を辿りはじめる。
 戸惑う千春をなだめるようにまたキスを繰り返す。
 もう今すぐに突き進んでしまいたい。
 自分にはそうする権利があると頭の中で誰かが叫ぶ。

「千春……」

 愛おしい名前を口にして、胸元のボタンに手をかけた。
 でもその時、彼女の胸が大きく上下しているのに気が付いて手を止める。

 ……そのまま、胸のリズムを注視する。

 千春の手術は成功した。
 このままいけば末永く日常生活を送ることができるだろう。
 でもまだまったく健康な状態とは言えないのも事実で、もうしばらくは経過観察が必要だ。このままこの行為を続けて、彼女の心臓に負担をかけるわけにはいかない。
 さらにいうとまだ清司郎の気持ちを告げられていないのに、衝動に任せて抱いてしまうのも本意ではなかった。
 清司郎は目を閉じて息を吐く。
 荒ぶる気持ちをやり過ごし、なんとか医師としての自分を取り戻そうと試みる。
 千春がベッドに身を投げ出したまま、小さく首を傾げた。

「清君……?」

 その、『清君』がまた清司郎の中の獣を目覚めさせようとする。
 だがもう一度息を吐いて、清司郎はなんとかそれを抑え込んだ。
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