エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
「本当に困ったもんなんだよ。清司郎宛に来た招待ですら、ほとんど行かないんだから」

 康二が嫌味を言う。

「お前、最後に行ったのがいつかわからんくらいだろう」

「……千春を連れて帰った日」

 清司郎が憮然として口を開いた。
 千春は目を見開く。
 千春が見合いから逃げ出したあの日、清司郎がホテルにいたのはそのためだったのか。
 あの日のことが頭に浮かんで、千春は不思議な気分になった。
 ほんの二カ月ほど前の出来事が、まるで遠い昔のことのようだ。
 あの時の千春は、なににも興味が持てずに心が死んだようだった。でも今、病気の子供たちの支援活動に興味を持ってパーティーに参加したいと思う自分がいる。
 たった二カ月で、こんなにも心と身体が変化するなんて奇跡みたいだと改めて思う。
 でも行きたいとは言えなかった。
 招待状をこんなにも嫌そうに見ている清司郎にそれを言う勇気はなかった。
 そんな勇気はないけれど……。

「清君、……ダメ……だよね?」

 恐る恐る、祈るような気持ちで千春は清司郎に呼びかける。
 清司郎がチラリと千春の方を見て、仕方がないというようにため息をついた。

「……いいよ、出席しよう」

「本当? ありがとう、清君!」
< 109 / 193 >

この作品をシェア

pagetop